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photo: found (france)
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Here is the excerpt from Ango Sakaguchi’s “War and a woman”.
I like the way they enjoy riding their bicycles.
This is possible only when they think they are hopeless.
(They think the war will destroy everything and they would die.)
After this sequence, the war ends and the reality comes into their life.
- Junko
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女は遊ぶといふことに執念深い本能的な追求をもつてゐた。バクチが好きである。ダンスが好きである。旅行が好きである。け れども空襲に封じられて思ふやうに行かないので、自転車の稽古をはじめた。野村も一緒に自転車に乗り、二人そろつて二時間ほど散歩す る。それがたしかに面白いのである。
交通機関が極度に損はれて、歩行が主要な交通機関なのだから、自転車の速力ですら新鮮であり、死相を呈した焼け野の街で変に生気が こもるのだ。今となつては馬鹿げたことだが、一杯の茶を売る店もなく、商品を売る商店もなく、遊びのないのがすでに自然の 状態の中では、自転車に乗るだけで、たのしさが感じられるのであつた。
女は亢奮と疲労とが好きなので、自転車乗りが一きは 楽しさうであり、二人は遠い町の貸本屋で本を探して戻るのである。その貸本がすでに数百冊となり、戦争がすんだら私も貸本 屋をやらうかなどと女は言ひだすほどになつてゐる。
野村には明日の空想はなかつた。戦後の設計などは何もない。その日、その日があるだけだ。
諸方が占領され戦争が行はれてゐるとき、 いくらかの荷物をつみ、女と二人で自転車を並べて山奥へ逃げる自分の姿を本当に考へこんでゐたのである。彼は自転車につむ わづかな荷物の内容に就いてまであれこれと考へてゐた。途中で同胞の敗残兵に強奪されたり、女が強姦されることまで心配してゐた。
悲しい願ひだと野村は思つた。すると彼は日本人がみんな死に、二人だけが生き残りたいとヤケクソに空想した。さうすれば女も浮気がで きないだらう。
けれども彼はそれほど女に執着してゐるのでもない。然し、事実は大いに執着してゐるのではないかと疑るときがあつた。なぜなら、戦 争により全てが破壊されるといふハッキリした限界があるので、愛着にもその限定が内々働き、そして落付いてゐられるのではないか、と 思はれたからである。なに、戦争の破壊を受けずに生き残ることができれば、もつと完全な女を探すまでだ。この不具な女体に 逃げられるぐらゐ平気ぢやないかと思ふ。
その不具な女体が不具ながら一つの魅力になりだしてゐる。野村は女の肢体を様々に動かしてむ さぼることに憑かれはじめてゐたのである。
「そんなにしてはいやよ」
彼は女の両腕を羽がひじめにして背の方へねぢあげた。情慾と憎しみが一つになり、そのやり方は狂暴であつ た。
「痛、々、何をするのよ」
女はもがかうとしても駄目だつた。そして突然ヒイーといふ悲鳴をだした。野村は更に その女の背を弓なりにくねらせ、女の首をガク/\ゆさぶつた。女は歯をくひしばつて苦悶した。そして、ウ、ウ、ウといふ呻きだけが、 ゆさぶれる首からもれた。
彼は女を突き放したり、ころがしたり、抱きすくめたりした。女は抵抗しなかつた。呻き、疲れ、もだえ、然 し、むしろ満足してゐる様子でもあつた。けれども女の快感はやつぱりなかつた。そして情慾の果に、野村を見やる女の眼には 憎しみがあつた。そして情慾とは無関係な何かを思ふ白々しい無表情があつた。
野村はその無表情の白々とした女の顔を変に心に絡みつくやうに考へふけるやうになつた。一言にして言へば、その顔が忘れかねた。そ の顔に対する愛着は、女の不具な感覚自体を愛することを意味してゐた。
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